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八千代松陰高等学校

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AEMコース2年 化学実験「時計反応」

投稿日2022/7/5

ヨウ素時計反応の実験を行いました。この実験は,ヨウ素酸カリウム水溶液と亜硫酸水素ナトリウム水溶液との酸化還元反応によりヨウ素が生成し、それがデンプンと反応して青紫色に変化しますが、2つの溶液の濃度差によって呈色するまでの時間が変化します。この実験では、反応速度が溶液の濃度や温度等によって、変わることを確認しました。化学反応の速さと反応条件について学ぶことができました。AEMの化学では、講義だけではなく、さまざまな実験を行っています。

生徒の感想をいくつか・・・ ※2人目の感想は長文です。そのくらい学びがあったということです!

(1)今回の実験で扱った反応速度は授業でもあまり理解できていなかったところだったのでしっかり考察ができるかが心配でしたが実験自体は楽しんでできました。特に色が瞬時に変わるところが何回見ても面白かったです。しかし、実験の準備は大変でした。今回は1ml単位で溶液を量り取る必要があったため、最初は緊張してなかなか作業が進みませんでした。それでも回数を重ねるごとに上達していって嬉しかったです。最後に先生が見せてくださった実験もとても興味深いと思いました。 最初に行った濃度と反応速度の実験では最初の方は特に問題なく行うことができましたが最後の2つが反応しませんでした。他の班は最後から2つ目まで反応していたのでその実験は2回やってみましたが、2回とも反応しませんでした。原因として考えられるのは自動撹拌機の回転速度が遅かったこと、蒸留水の割合が多くなってしまったことの2つですが、どちらであっても私たちのミスであることに変わりはないので次はもっとよく考えかつ慎重に実験を行いたいと思います。2つ目の実験は全て問題なく終わりました。自分たちでマスキングテープに色をつけ、判別しやすくしたのが実験をスムーズに行えた要因の1つだと思います。この点は良かったと思うので今後も臨機応変に工夫を凝らしながら実験に取り組みたいと思います。授業の最後にグラフを2つ書きましたが、どちらもtグラフは反比例の、1/tグラフは比例のグラフでした。このことから濃度や温度が上がると粒子の数が増えたり運動が活発になったりして反応しやすくなるということが考えられます。また、考察も大変でした。反応速度に関する内容はもちろん、イオン反応式から化学反応式を作る作業も思ったように進まず、苦労しました。去年の内容について勉強がおろそかになってしまっているので2学期までにもう1度復習しておきたいと思います。

(2)今回は授業でやった反応速度についての実験を行った。この反応速度を求めるのに反応速度式というのを用いるのだが、これは反応の速さと反応物の濃度の関係を表す式である。 この式は化学反応がxA+yB→Cという反応式で表されるとき、 v=k[A]x[B]yで表される。(k:反応速度定数) 今回の実験では、この反応速度式が実際に成り立つのかというのを調べるために実験を行った。今回はヨウ素酸カリウム水溶液と亜硫酸水素ナトリウム水溶液とデンプン水溶液の混合水溶液を用いて行った。 この2つの水溶液を混合させると次の反応が起こる。 ①IO3-+3HSO3-→I-+3SO4-+3H+ ②IO3-+5I-+6H+→3I2+3H2O ①の反応でヨウ化物イオンが生成され、②の反応でヨウ化物イオンが酸化してヨウ素に変化する。 また、①の化学反応式より、ヨウ素酸カリウムと亜硫酸水素ナトリウムの反応は KIO3+3NaHSO4→3Na++K++3H++I-+3SO4-とわかる。・・・① また、②の反応は亜硫酸水素イオンが消費されたときの反応であり、この場合の反応式はKIO3+5I-+6H+→3I2+K++3H2O と表される。・・・② この反応式より、亜硫酸水素イオンが消費されたあとはヨウ素が生成されるとわかる。 混合水溶液が濃青色に変化するのは亜硫酸水素ナトリウム水溶液とデンプン水溶液の混合水溶液中のデンプンがヨウ素と反応することでヨウ素デンプン反応を起こすことが原因だと考えられる。 そして今回の実験では反応速度式が成り立つか示すために実験①ではヨウ素酸カリウム水溶液の濃度を変化させて実験を行った。 そうすると、結果を見ると濃度を高くすればするほど反応時間が短くなり、濃度と反応時間の逆数が比例することがわかったので、濃度と反応時間は反比例することがわかった。 また、今回の反応は亜硫酸水素ナトリウム中の亜硫酸水素イオンが全てなくなってから反応が起こるので、亜硫酸水素ナトリウムのモル濃度減少量で反応速度が求められる。 これで求めていくと、ヨウ素酸カリウムの濃度が6.0*10^-3(mol/L)のときの反応速度は 2.0*10^-2/106.0=1.9*10^-4と求められる。 そして、上記①の化学反応式より、反応速度式は v=k[KIO3][NaHSO3]3 と表されるとわかる。これより、反応速度定数は 1.9*10^-4=k*6.0*10^-3*(2.0*10^-2)^3で求められる。 求めると、それぞれの値にばらつきはあるが私達の班の反応速度定数の平均は3952.9となった。 そして、実験②では、今度は溶液の濃度は変化させず、温度を変化させて実験を行った。 そうすると、温度が低いほど反応時間は長く、逆に温度が高いほど反応時間は短くなっていった。 これより、反応速度は温度が高いほど速くなるということがわかった。 (反応速度定数が大きくなるため・これより温度が高くなると反応速度定数が大きくなるということもわかった。) また、溶液の温度と反応時間の逆数が比例することがわかったので、溶液の温度と反応時間は反比例の関係にあることもわかる。(本当は指数関数的な感じになるらしいが…) また、実験①・②の反応後の廃液(ヨウ素デンプン反応を起こしたヨウ化カリウム水溶液)にチオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)を加えると、濃青色だった水溶液が無色透明に変わった。 これはチオ硫酸ナトリウムが還元剤として働いて、ヨウ化カリウムを還元させたことにより、ヨウ素が薄くなっていたからだと考えられる。(酸化還元反応の利用) この化学反応式は I2+2Na2S2O3→2NaI+Na2S4O6 となる。 このとき、ヨウ化カリウムは水溶液中にヨウ素を共存させるための物質であるので化学変化には関わらない。 この反応はヨウ素滴定(ヨードメトリー)というものにも利用されており、このヨウ素滴定は化学反応により間接的に酸化量を知ることができる滴定である。 最後にみんなの前で3つの水溶液を混合させて撹拌させると最初は淡黄色に変化したが時間が立つと濃青色に変化するのを繰り返し起こる反応(いずれ反応が止まり濃青色になる)が起きた。 これは振動反応によるものだと考えられる。時計反応では1回変色するともう変色したりすることはないが(別名ベロウソフ・ジャボチンスキー反応:BZ反応)この振動反応では反応が止まらない限り色がずっと変色していく。 これらから振動反応と時計反応は違う反応かと思いきや、時計反応と振動反応はどちらも系内の反応速度の差を利用したものである。 (以上実験のまとめ) 感想:これまでの実験は目に見える反応であり、どのように変化したか実験の様子だけを観察するものであったが(定性的な実験)、今回の実験はどのように変化したかだけでなく温度や濃度などに注目しそれらがどのように関係したかまで考察するという実験(定量的な実験)を行った。 物理の実験と同じようにデータを記録し、それをグラフ化したりすることによって法則を掴むといったことが今回の主な実験であった。 もちろん濃度が少し違ったりしただけで数値が大幅にずれたりするので、今回自分も少し多く溶液を入れてしまったりしてやり直す羽目になったことがあった。ただ、やり直したかいがあったか、スプレッドシートを作って実際グラフにしてみると、自分たちが想像しているよりも正確性があってびっくりした。 ただ大学などへ行って実験を行う際は今回みたいに多少のズレは気にしないということはできないだろうし、研究結果を発表する際などにはそういうズレなどが原因で指摘されたりしてしまうこともあるだろうから、今のうちから正確な実験を行えるように工夫(試験管に決まった量の水溶液をスポイトを使ってぴったり入れるにはどうしたらより簡単かとか、少しずれてしまったらどういうふうに修正しようかとか)するよう心がける必要があるのかなと思った。 また、これまでの実験では無色のものが有色なものに変わるということはあったが、 有色なものが無色になるという実験は初めて行ったので、そういう実験もあるんだなと感動した。あんな小さいかけら(チオ硫酸ナトリウムの結晶)でかけらの何倍もの体積がある水溶液の色を消してしまうのだから、やはり化学はすごいし面白いなと改めて認識するいい機会になった。チオ硫酸ナトリウムが還元剤として働いたことで色を消したのはわかったが、色を消すのは結晶のどういう構造からの作用なのかとか、細かいところも時間があったら調べられたらいいなと思った。

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