NHK Eテレ『100分de名著』でもたびたび講師を務められ、全国で講演活動を行っていらっしゃる能楽師の安田登氏の熱血講座が、本校の土曜講座でも開かれました。
まずは甲骨文字の読解にチャレンジ。漢字のルーツである古代文字の中に、現代にも継承されている形があることを知って、生徒からは感嘆の声しきりでした。圧巻は夏目漱石『夢十夜』の第三夜の朗読です。能の要素を取り入れた安田氏のパフォーマンスの圧倒的な迫力に、会場全体が「文化五年の雨の夜」にタイムスリップしたかのような感覚に包まれました。講座終了後も、周囲を取り囲んでなかなか帰ろうとしない生徒達に対して、質問の一つひとつに丁寧に答えてくださいました。
安田氏は文字の功罪を指摘されています。「文字という外部記録装置によって、人間は過去を参照し、未来を変えられるようになって、『心』が生まれた。しかし、その副作用として不安が増大しすぎてしまったのが現代である。」と。そして「今こそ『文字に代わる何か』『心に代わる何か』が求められている。そして、それを見つけるのは、今を生きる君たちである。」という大きな宿題を、ヒントとともに示してくださいました。
今回は、甲骨文字によってもたらされた約3,000年前のシンギュラリティーを通して、来るべき知的大転換について考えるという、スケールの大きな講座でした。まさに安田氏がよく著作で触れられている、『論語』の「温故而知新」です。脳がフル回転し、知的興奮を体験することができた、濃密な90分でした。
このたび安田氏から本日の講座内容と重なるテーマの最新作『魔法のほね』を寄贈していただきました。こちらは児童書という体裁で書かれたファンタジー小説ですが、主人公の少年の成長譚は、大人が読んでもいろいろと考えさせられる内容となっています。素敵な作品ですので、生徒の皆さんも、ぜひ手にとって読んでください!
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