第1弾「ボトルの銀メッキ」。グルコースの還元性による銀の析出(銀鏡反応)を利用した、ボトルの銀メッキです。
第2弾「ナイロン66の合成」。ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸ジクロリドを反応させて、繊維(ナイロン66)を取り出す実験です。ストッキングなどの糸の生成方法と同じやり方です。液体の界面から糸が出来上がっていく過程を目にし、驚きの声を上げていました。
第3弾「ビニロンの合成」。洗濯のりの主成分のポリビニルアルコールと濃塩酸とホルマリンを混合して、加温することにより、ビニロンを合成する実験です。京都大学の桜田一郎教授らによって1939年に開発され、国産初の合成繊維であるビニロンの生成方法を踏襲しました。
第4弾は調理室に場所を移して「天然着色料を使っていちご蒸しパンを作ろう」です。有機化学の「染料」分野を楽しみながら学びました。
生徒の感想をお伝えします。
1)銀メッキについて 銀鏡反応はよくホルムアルデヒドなどのアルデヒドとアンモニア性硝酸銀水溶液を用いることが多いが今回はグルコースという単糖類を用いた。 グルコースは水に溶けると水溶液中ではαグルコース、βグルコース、そして直鎖状のグルコースの3つの形で存在するが、このうち還元性を示すのは直鎖状のグルコースである。 直鎖状のグルコースはこの3つの中でも一番存在比が低く、αグルコースが約36%、βグルコースが約64%なのに対し、直鎖状のグルコースは微量しか存在しない。 そのため、グルコースを用いると還元反応はゆっくりになる。 私達はこの前ホルマリンを用いて銀鏡反応の実験を行ったことがあったが、その時よりも今回グルコースを用いたときのほうが明らかに銀ができるまでの時間が長かった。 今回はボトル全体に銀めっきをしないといけないため、早く銀が生成してしまうとボトル全体に銀めっきができなくなってしまうため、グルコースを用いることで還元反応の反応速度を小さくしていると考えられる。 また、銀鏡反応を行う際には塩基性条件のもとで行わないといけないため、硝酸銀水溶液を塩基性にするためによくアンモニアを加えることがある。 しかし今回はアンモニアではなくエチレンジアミン溶液を用いた。 これはエチレンジアミンを用いたほうが安定な銀錯体を生成することができるためである。 銀イオンを還元する際には適切な配位子で錯体にしないと銀として析出しない(酸化銀として沈殿してしまう)。今回の実験ではきれいな銀を析出するのが目的であるため、アンモニアよりエチレンジアミンを用いたほうが成功する可能性が上がるのではないかと考えられる。 (2)ナイロン66について まず、ナイロン66の合成では普通アジピン酸とヘキサメチレンジアミンを用いる。 しかし今回、アジピン酸ではなくアジピン酸ジクロリドを用いた。 これはアジピン酸ジクロリドのほうがアジピン酸より他の物質との反応性が高いためである。 また、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸ジクロリドを反応させると、ナイロン66の他に塩酸が生じる。そのため、溶液を中和させるためにヘキサメチレンジアミンに水酸化ナトリウムを加えて塩基性溶液にする必要があったので今回はその操作を行った。 反応式)nNH2-(CH2)6-H2N+nCClO-(CH2)6-CClO → [-CO-(CH2)4-CO-NH-(CH2)5-NH-]n + 2nHCl また、ナイロンをアルミニウム箔に載せ、金網の上で穏やかに熱すると、ナイロンがだんだん小さくなっていって最終的には消失した。 これはナイロンが溶けていった結果である。ナイロンは熱可塑性を持つ繊維のため、熱に弱いため加熱すると溶けると考えられる。 (3)ビニロンについて 洗濯のりはポリビニルアルコールを主成分に持つ。 ポリビニルアルコールはヒドロキシ基を多く持つため、水に溶けやすい物質となっている。 そのため、繊維として取り出しづらいため、ホルマリンでヒドロキシ基を酸化することで水溶性を下げて不溶性にし、繊維をとりだしやすいようにしている。 この操作をアセタール化という。 また、ナイロン66とビニロンの違いとして、ナイロン66は乾燥させるとすぐ乾いたが、ビニロンは中々乾かなかった。そして、ビニロンはスポンジのように水を吸っていた。 これは吸湿性の違いが現れているのかなと考えられた。 感想)今回は銀鏡反応を生かして銀メッキを行った。 1年前に酸化還元反応を利用して銅に銀メッキや金メッキを行ったことがあったが、このときはよく身近でも使われているめっきの方法を使ったんだなと思っていた。しかし、今回の銀鏡反応を生かして銀メッキを行えるというのは初めて知ったし、そんな発想もあったかとハッとさせられた。 しかも銀鏡反応を用いてやったほうがすごい綺麗に銀メッキができたのですごいいい方法を見つけたもんだなと感心した。 銀鏡反応で銀メッキをするように、物質の性質を生かして酸化還元反応以外で綺麗に金メッキや銀メッキをする方法はないのかなとすごい気になったので調べてみようと思った。 また、授業で合成繊維について勉強したが、今回は実際に合成繊維の生成を行った。 生成に用いる物質や生成の様子などはこれまで動画や参考書でしか見たことなかったり名前を聞いたことがなかったので、今回自分たちで実際に生成したことで生成に用いた物質や反応の様子が頭に印象強く残った。 実際に生成してみると意外と簡単に合成繊維ができて驚いた。このようにしてできた繊維が私達が着ている洋服などに用いられていると思うと、実生活に結びつく化学技術はいろんな可能性を持っていて素晴らしいなと改めて感心したいい機会になった。 そして今回の実験では、通常用いる物質とは違った物質を用いることで実験の成功可能性を上げるということを何個かの操作で行った。 その際に思ったのだが、一つの方法だけで実験を行うのではなく、色んな方法を試してみてどれが一番成功可能性が高いのか試すというのも大事なことなんだなと感じた。 今回の銀鏡反応は還元性を利用したものであるので、還元性を持つ物質を用いれば銀鏡反応を起こせるはずなので、どの物質が一番キレイに、そして早く銀を析出するのかなども実験してみるのもいいのかなと感じた。 後はもしかしたら還元性を持つ物質でも銀鏡反応を示さなかったりなど、例外とかも出てくるのかなと思った。こうやって深掘りできるからこそ化学とか理科は面白いのだなと改めて感じた。 齋藤先生や高橋先生のおかげで実験の楽しさ、面白さ、奥深さ、そして大切さなどをこの2年間で本当に実感することができました。たくさんの面白い実験のおかげで化学が大好きになったし、自分の行きたい進路も決めることができました。 自分も齋藤先生や高橋先生のように、生徒に学びを与えつつも実験を楽しんでやらせてあげられる先生になりたいなと思いました。 この2年間でたくさん実験をやって学んだことを無駄にすることなく、大学でも勉学に励み、実験や研究を行っていこうと思います。
2)今回実験としては初めての化学と家庭科を結びつけた実験を行った。 他教科と結びつけてやる実験は初めてだったが非常に楽しくて興味深いものになったし、何よりも私達の身近にどう結びついているかを身を以て学ぶことができたのはすごいいい機会になったと思う。 化学では染料について学んでいたが、これは繊維などを着色する際に用いるものが大半だった。そのため、食べ物の着色する時の着色料についてはあまりやっていなかったので、今回の実験で食べ物に使える天然着色料について学べてよかった。 紅生姜やたくあん、サフランなどは天然のもの(植物や他の色がついている食べ物を使って)を用いて着色を行っているものが大半だという。(色を強調するために食紅などの化学着色料も使うこともあるが) 天然着色料を用いれば非常にエコだし食べ物であれば健康的ではあるが、着色が弱かったりコストが掛かってしまったりとで化学着色料を使うということが多くなっていると考えられる。 服の繊維などに色を付けるために化学着色料を用いるのは大丈夫にしろ、食べ物に化学着色料をふんだんに使ってしまうと健康に非常に悪いので、しっかりそこら辺のリスクを考えながら着色料に何を使うかは考えたほうがいいのかなと思った。 あとは星野先生も言っていたが、最近インスタ映えとかで明らかに色が鮮やかすぎる食べ物などもあるが非常に健康には悪いと思う。なにか発色の良い天然着色料を用いるか、健康にあまり悪くない化学着色料を使ってみるとかしてみると健康に悪くない食べ物になるのではないのかなと思った。 また着色料だけではなく調味料とか保存料とかでも化学的に作られたものを使うことがあるが、これらもやはり健康面を考えて使うべきだと思う。 食べることは健康を保つことにもつながるだろうから、この食べるというところで健康ではないことをたくさんしてしまうと食べることの意義が失われてしまうと思うので、しっかり考えるべきだと思った。 忙しい中、僕達のために実験、調理実習を行ってくださりありがとうございました。
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